ぼくらは夜にしか会わなかった 市川拓司 著
あらすじ
天文台の赤道儀室で「幽霊」を見たと言う早川美沙子と、ぼくら級友は夜の雑木林へ出かけた。だが「幽霊」は現れなかった。彼女は目立ちたがり屋の嘘つきだと言われ、学校で浮いてしまう。怯えながらぎこちなく微笑む彼女に、心の底から笑ってほしくてぼくはある嘘をついたーー。(表題作)そっとあなたの居場所を照らしてくれる、輝く星のように優しい恋愛小説集。
The first line
〈白い家〉"ぼくのほうが最初に気づいてた、と彼は言った。"
〈スワンボートのシンドバッド〉"植物園の駐車場に車を駐めて、そこから天文台までふたりで歩いた。"
〈ぼくらは夜にしか会わなかった〉"ぼくらは雑木林の斜面を登って天文台の中へと入った。"
〈花の呟き〉"不思議なことに、わたしは二十七のこの歳になるまで恋をしたことがなかった。"
〈夜の燕〉"男は走っていた。"
〈いまひとたび、あの微笑みに〉"彼女のことはいまでもよく憶えている。"
市川拓司著『ぼくらは夜にしか会わなかった』を読みました。
市川さんの小説はどれも切なくて、胸が苦しくなって、過去を思い出させる、ぼくにとったらもうどうしようもなくなる。今回の恋愛小説集も、どれも切なかった。
大きなテーマは、過去の想い、かな。それが結ばれたり離れたり叶わなかったり、、、どこか欠落している人々が、似た相手に心をゆるしていくそのじれったくなるほどゆっくりな恋愛。
「夜の燕」これはもうどうしようもなく胸が苦しくなる。こんなにも純情で一途で相手のために全てをぶつける姿は、恋愛の極致やと思う。こんなにも想ってくれたら、相手も幸せ。なのに、、、そして最後も、こんな終わり方か〜ってなる。余韻がすごい。
子供みたいな純情に触れたい方におすすめの小説。
幼心に叶うものはない。そして、過去には絶対に勝てない。
好み: ★★★★☆☆