小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

いつまでも記憶に残るおすすめ小説16選 in 2016

はじめまして。読書が好きな大学生です。大学生という膨大な時間の中、日々小説の世界に飛び込んでいます。

昨年は100冊以上の小説と出会い、今までで一番多くの物語に触れることができた年となりました。

そんな僕が今回、昨年読んだ100冊以上の小説の中から記憶に残る16冊を紹介したいと思います。本当は10選にするつもりでしたが、どうしても絞り切ることができませんでした。そんな16選です。

選定条件

  • 2016年に読んだ小説に限定
  • 2017年となった現在でも記憶に残っている小説
  • ジャンル、著者の縛りは無し
  • 他の推薦を一切反映しない独断と偏見

尚、紹介の順番はランキングではなく僕が読んだ順番です。また、僕の感想にはネタバレは書いてありませんのでご安心ください。

では、早速ですがおすすめの16冊を紹介していきます。

 

1.夏と花火と私の死体 乙一

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

 
  あらすじ

九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく――。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々と訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作。

The First Line

九歳で、夏だった。


その日、家の門に辿り着いた政義の見たものは優子の炎に包まれた姿でした。

ホラー小説のジャンルには入るんだろうけれど、グロテスクな純ホラーとは全然違う。幼少の夏を思い出させてくれる、そんな爽やかでノスタルジックな雰囲気で終わると思いきや、さすがはホラー小説。このコントラストにやられた。幼少時代の視点に戻って読めば、きっと満足できるはず。

 

 

2.サヨナライツカ 辻二成 著

サヨナライツカ (幻冬舎文庫)

サヨナライツカ (幻冬舎文庫)

 
 あらすじ

「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと愛したことを思い出すヒトとにわかれる。私はきっと愛したことを思い出す」。”好青年”とよばれる豊は結婚を控えるなか、謎の美女・沓子と出会う。そこから始まる激しくくるおしい性愛の日々。二人は別れを選択するが二十五年後の再会で……。愛に生きるすべての人に捧げる渾身の長編小説。

The First Line

第一印象は信用できない。

はじめ読み終わったとき、確かに面白ったけれどそこまで評価は高くなかった。でもこの小説がすごいのはその余韻。読んでからしばらくたってもこの物語を思い出すときがあって、もう一度読みたい気になる。とても大人な恋愛小説。こんな燃え上がる恋できる人生絶対悔いないなと思う。

 

 

3.青の炎 貴志祐介

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

 
 あらすじ

櫛森秀一は、湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭を踏みにじる闖入者が現れた。母が10年前、再婚しすぐに別れた曾根だった。曾根は秀一の家に居座り、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを……。日本ミステリー史に残る感動の名作。

The First Line

薄曇りの空には、数多くの鳶やカラスが、乱舞していた。

いわゆる謎解きのミステリーではなくて、「逃げ」のミステリー。どんよりとした天気の中青の炎に燃える秀一の憎悪と切なさ。読んでいて秀一の賢さに感心しつつも、未熟さについつい同情してしまう。ミステリーではあるけれど、秀一の心情を味わってほしい一冊。最後の1行は決して先に見ないように。そこに秀一の想いがつまっている。

 

 

4.色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 村上春樹

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)
 
 あらすじ

多崎つくるは鉄道の駅をつくっている。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。理由も告げられずに――。死の淵を一時さ迷い、漂うように生きていたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時何が起きたのか探り始めるのだった。

The First Line

大学二年生の七月から、翌年の一月にかけて、多崎つくるはほとんど死ぬことだけを考えて生きていた。

友人のかけがえのなさに気づけるきっかけとなるかも。人間の何気なくも普遍的な悩みと向き合うつくるを、自分と照らし合わせる人も少なくないのでは。誰にでもつくるのような感情を抱いた経験があるはず。自分の個性とは?自分は孤独とどう向き合うのか?村上春樹さん独特の雰囲気を存分に味わえる一冊。

 

 

5.蒲公英草紙 恩田陸

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

 
 あらすじ

”青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れられるちから、未来を予知するちから……、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。”

The First Line

”いつの世も、新しいものは船の漕ぎだす海原に似ているように思います。”

近代文学を読んだような余韻に浸れる。今回は1世紀も前が舞台となる常野シリーズ。物質的な豊かさがなかったこの時代に、現在と比べてあったものは心の豊かさ。とても穏やかにそして優しさに包まれた雰囲気の中、常野一族もみんなと混ざって健やかに懸命に生きる姿は、心の乏しさ故に忘れていた大切な何かを思い出させてくれる。

 

 

6.ねじまき鳥クロニクル 村上春樹

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

 
 あらすじ

〈第1部 泥棒かささぎ編〉「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。「質問しないで」と彼女は言った。「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。(本文より)


〈第2部 予言する鳥編〉「今はまちがった時間です。あなたはここにいてはいけないのです」しかし綿谷ノボルによってもたらされた深い切り傷のような痛みが僕を追いたてた。僕は手をのばして彼を押し退けた。「あなたのためです」と顔のない男は僕の背後から言った。「そこから先に進むと、もうあとに戻ることはできません。それでもいいのですか?」(本文より)


〈第3部 鳥刺し男編〉僕の考えていることが本当に正しいかどうか、わからない。でもこの場所にいる僕はそれに勝たなくてはならない。これは僕にとっての戦争なのだ。「今度はどこにも逃げないよ」と僕はクミコに言った。「僕は君を連れて帰る」僕はグラスを下に置き、毛糸の帽子を頭にかぶり、脚にはさんでいたバットを手に取った。そしてゆっくりとドアに向かった。(本文より)

The First Line

台所でスパゲティーをゆでているときに、電話がかかってきた。

3部作にもわたる村上春樹さん著の名作。圧倒的な密の濃さ。一見妻の失踪という単純なきっかけではあるけれど、そこからの展開はまさに村上ワールド。近くも感じるし異次元にも感じる世界観。読む人にとってまったく違った物語になると思う。「僕」とは?「ねじまき鳥」とは?一体なんなのか。答えは決して一つではない。

 

 

7.占星術殺人事件 島田荘司

占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)
 
 あらすじ

星座に従い、六人の処女の肉体から必要な各部をとり、完成美をもつ「女」を合成する、という無気味な遺言状。そして一ヵ月後、六人の女性が行方不明となり、日本各地からバラバラ死体で発見された…。奇想天外な構想、驚くべき大トリックと猟奇殺人の真相!名探偵・御手洗潔のデビュー作として、平成「本格」時代招聘の先駆となった、記念碑的名作!

 The First Line

これは私の知る限り、最も不思議な事件だ。

これこそ日本版シャーロック・ホームズかな。安楽椅子探偵と助手が事件に挑む姿勢は、場所と年代が違うだけでまさしく古典もの。40年以上未解決の事件は不可解な極まりなくて、御手洗潔も苦戦しつつも、するどい洞察力と推理力で解決に導く。その探偵ぶりは圧巻で、ミステリファンをきっと納得させることでしょう。

 

 

8.TUGUMI 吉本ばなな

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

 
 あらすじ

病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った――。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。

The First Line

確かにつぐみは、いやな女の子だった。

夏から秋へと移りゆく切ない季節の雰囲気と、少年少女の無垢で透明だからこその感情とが絶妙に合わさっていて、物語がとてもきれい。表現一つ一つにも力があって、どんどん魅かれていく。病弱ながらもわがままで強気なつぐみから、元気すらもらえる。大人には少々眩しすぎる。

 

 

 9.塩の街 有川浩

塩の街 (角川文庫)

塩の街 (角川文庫)

 
 あらすじ

塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが――「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。『空の中』『海の底』と並ぶ3部作の第1作にして、有川浩のデビュー作!

The First Line

両肩にリュックの肩紐がきつく食い込む。

実に多くの要素が含まれた小説。死別、恐怖、安心、愛、恋、絆…。世界が塩で埋め尽くされるというSF設定の中で、残された人々が起こす行動は本当に人間の欲そのもので、よくも悪くもそれがとても純粋。この小説のジャンルをSFととらえるか恋愛ととらえるかは読者によっても異なる。

 

 

 10.風の中のマリア 百田尚樹

風の中のマリア (講談社文庫)

風の中のマリア (講談社文庫)

 
 あらすじ

命はわずか三十日。ここはオオスズメバチの帝国だ。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと「偉大なる母」のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。著者の新たな代表作。

 The First Line

マリアは木立の中を縫うように飛んだ。

この小説には人間は出てこなくて、羽化してからたった30日しか生きられないオオスズメバチの物語。限られた命ある限り役割を全うしつつも、自身のアイデンティティを問うハチたち。人間から見るとすぐに駆除されるちっぽけな1つの巣でも、彼女らには永遠と思われる帝国。彼女たちの生きざまをぜひとも読んでもらいたい。

 

 

11.冷たい校舎の時は止まる 辻村深月

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

 
あらすじ

 〈上〉雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヶ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう。


〈下〉学園祭のあの日、死んでしまった同級生の名前を教えてください――。「俺たちはそんなに薄情だっただろうか?」なぜ、「ホスト」は私たちを閉じ込めたのか。担任教師・榊はどこへ行ったのか。白い雪が降り積もる校舎にチャイムが鳴ったその時、止まったはずの時計が動き出した。薄れていった記憶、その理由とは。

The First Line

落ちる、という声が本当にしていたかどうか。

最初の方は読み進めても全くもって先がみえなくて、まさに霧がかった状態。ただひたすらに読み進めて行くうちにますます不可思議な世界に引きずり込まれていく。その分読後の余韻はなかなか治まらなかった。ホラーテイストも若干ありつつ青春テイストもありつつ。懐かしの校舎が舞台だからノスタルジックな想いにも浸れるのでは。

 

 

12.悪の教典 貴志祐介

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

 
 あらすじ

〈上〉晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき――。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。


〈下〉圧倒的人気を誇る教師、ハスミンこと蓮実聖司は問題解決のために裏で巧妙な細工と犯罪を重ねていた。三人の生徒が蓮実の真の貌に気づくが時すでに遅く、学園祭の準備に集まったクラスを襲う、血塗られた恐怖の一夜。蓮実による狂気の殺戮が始まった!ミステリー界の話題を攫った超弩級エンターテインメント。

The First Line

混沌とした夢の中にいた。

まさしく一気読みをした。サイコホラー小説独特の緊迫感は手に取るように伝わってくる。蓮実先生の頭のキレ具合がまたすごくて、こんなサイコが周りにいたらおそらく生き残れないと思う。上巻の穏やかさと下巻の混沌さ、そのギャップを楽しんでもらいたい。性善説性悪説か、それによってこの小説の見方も若干変わるかな。Excellent.

 

 

13.陽だまりの彼女 越谷オサム

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

 
 あらすじ

幼馴染みと十年ぶりに再会した僕。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、僕には計り知れない過去を抱えているようで――その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる!誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさも、すべてつまった完全無欠の恋愛小説。

The First Line

何度確かめても、受け取った名刺には「渡来真緒」とある。

とても明るくて、読んでいるこっちまで幸せになるほどに幸せに満ちた小説。こんなカップル理想だし、こんな風に好きな人とずっと一緒にいられたら毎日楽しいだろうなとうらやましさが積もっていく。でも、結末が意外過ぎて…。切なさもありながら、恋愛のすばらしさをこれでもかと味わってみては。

 

 

14.きいろいゾウ 西加奈子

きいろいゾウ (小学館文庫)

きいろいゾウ (小学館文庫)

 
 あらすじ

夫の名は武辜歩、妻の名は妻利愛子。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若夫婦が、田舎にやってきたところから物語は始まる。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった――。

The First Line

とおいとおい、空のむこう、雲をこえて、かぜをすりぬけて、そのもっともっとむこうに、一頭のゾウがすんでいました。

陽と陰のコントラストが絶妙で、それぞれに合った文章と描写がとても惹きつけられる。所詮文字を追っているだけなのに、明らかに他の小説読むときより絵が浮かんでくる。まるで絵本を読んでいるみたいな感覚。この自然体でありながらも陰を抱える、ほのぼのとする夫婦像は憧れる。読後はものすごく幸せな気分になる。

 

 

15.深夜特急  沢木耕太郎

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

 
 あらすじ

〈1〉インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗り合いバスで行く――。ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは、「大小」というサイコロ博奕に魅せられ、あわや……。一年以上にわたるユーラシア放浪が、今始まった。いざ、遠路二万キロ彼方のロンドンへ!


〈2〉香港・マカオに別れを告げ、バンコクへと飛んだものの、どこをどう歩いても、バンコクの街も人々も、なぜか自分の中に響いてこない。〈私〉は香港で感じた熱気の再現を期待しながら、鉄道でマレー半島を南下し、一路シンガポールへと向かった。途中、ペナンで娼婦の館に滞在し、女たちの屈託ない陽気さに巻き込まれたり、シンガポールの街をぶらつくうちに、〈私〉はやっと気づいた。


〈3〉風に吹かれ、水に流され、偶然に身をゆだねる旅。そうやって〈私〉はやっとインドに辿り着いた。カルカッタでは路上で突然物乞いに足首をつかまれ、ブッダガヤでは最下層の子供たちとの共同生活を体験した。ベナレスでは街中で日々演じられる生と死のドラマを眺め続けた。そんな日々を過ごすうちに、〈私〉は自分の中の何かから、一つ、また一つと自由になっていった――。


〈4〉パキスタンの長距離バスは、凄まじかった。道の真ん中を猛スピードで突っ走ったり、対向車と肝試しのチキン・レースを展開する。そんなクレイジー・エクスプレスで、〈私〉はシルクロードを一路西へと向かった。カブールではヒッピー宿の客引きをしたり、テヘランではなつかしい人との再会を果たしたり。前へ前へと進むことに、〈私〉は快感のようなものを覚えはじめていた――。


〈5〉アンカラで〈私〉は一人のトルコ人女性を訪ね、東京から預かってきたものを渡すことができた。イスタンブールの街角では熊をけしかけられ、ギリシャの田舎町では路上ですれ違った男にパーティに誘われて――。ふと気がつくと、あまたの出会いと別れを繰り返した旅もいつのまにか〔壮年期〕にさしかかり、〈私〉は、旅をいつ、どのように終えればよいのか、考えるようになっていた――。


〈6〉イタリアからスペインへ回った〈私〉は、ポルトガルの果ての岬・ザグレスで、ようやく「旅の終わり」の汐どきを掴まえた。そしてパリで数週間を過ごしたあと、ロンドンに向かい、日本への電報を打ちに中央郵便局へと出かけたが—―。Being on the road――ひとつの旅の終りは、新しい旅の始まりなのかもしれない。旅を愛するすべての人々に贈る、旅のバイブル全6巻、ここに完結!

 The First Line

ある朝、眼を覚ました時、これはもうぐずぐずしてはいられない、と思ってしまったのだ。

この小説を読めばまず間違いなく旅への衝動に駆られる。この小説をバイブルとするバックパッカーも多いのでは。英語がしゃべれなくたって、お金がなくたって、人間決意をもって世界に出ればなんとかなる。世界の広さと旅する楽しさ、そしてやりたいことをやるすばらしさを学ぶことができるそんな一冊。東南アジアは特に刺激的。

 

 

16.そして二人だけになった 森博嗣

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

 
 あらすじ

全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、建築家など6名が集まった。プログラムの異常により、海水に囲まれて完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は……。反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。

The First Line

僕は海が嫌いだ。

題名から何となくの方向性は理解できると思う。実際そうで、あの「そして誰もいなくなった」と同じ密室仕掛け。一見普通のミステリではあるけれど、この小説のすごいところは果てしない結末。クライマックスかと思いきや、さらにその先に…。トリックもさることながら、この今までにない結末をぜひとも味わってほしい。

 

 

以上が、僕が昨年読んだ小説から選んだおすすめの小説16選でした。

これほどの面白い小説と出会えることができて、僕は幸せ者だと思います。今までに読んだ小説すべてを含めると、紹介したい小説はもっとあります。また機会があれば…。

最後に、このブログを読んでくださった皆さんが一冊でも多く記憶に残る面白い小説と出会えることを心より願っております。