山越くんの貧乏叙事詩 芦原すなお 著
あらすじ
”朋輩との切磋琢磨(麻雀)や日課(居酒屋通い、たまに庭の蛙観察)にいそしむ山越只明くん、二十歳。妙なバイトに借り出され、偏屈な教授の弟子にされつつ、毎日はおおむね愉快に、時折切なく過ぎてゆく。直木賞作家が贈る、昭和のぐうたら大学生のほんわかゆるゆる青春小説。”
The First Line
”あの年の夏休みは七月初めの梅雨明けと同時に始まったのだった。”
この小説を手に取ったときは森見登美彦さんのパクリかなとも思ってたけど、それとはまた違う独特なコミカルさがと世界観があって面白かった。
人生で最も怠ける期間である大学生活は、いつの時代も同じやねんなと。現代とは違う昭和ならではの背景にもかかわらず、結果的にはぐうたらに行き着く。山越くんが森見さん小説の世界に迷い込んだとしても、たぶん違和感なくなじめると思う。大学生って不思議。
途中までは友人内でのアホなやりとりで面白く、最後は学生ならではの葛藤とアホさに少し心がうるっとくる。こんな友情なかなかないし、こんなにも気ままに暮らせたらきっと人生楽しいと思う。ラルケット・グラツィオーソはけっこう感動できる。
僕はもう大学を卒業して社会人となって、今となってはすでにあのぐうたらが恋しい。あの時は早く脱出したかったけれども。故郷を離れた今だからこそ読んでよかった。
好み: ★★★☆☆☆