小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

国境の南、太陽の西  村上春樹 著

 

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

 

 

あらすじ

”今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業続けていかなくてはならないだろう――たぶん。「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現れて――。日常に潜む不安をみずみずしく描く話題作。”

 

The First Line

”僕が生まれたのは一九五一年の一月四日だ。”

 

村上春樹著、「国境の南、太陽の西」を読みました。

 

 

村上春樹さんノーベル文学賞受賞してほしかったな。そう思って今回手に取った。

村上春樹さんの小説でいつもついてくる、脆くて蔭の感情が、今回は陽の絵にかいたような幸せな現実と対比されることでより際立っていた。12歳のころからすれ違い、37歳になってもなお付きまとう存在が、年月に比例するかのように濃くなっている。

この小説、他の村上春樹さんの作品と比べると短いけれど、内容はとても詰まっていて、感情が重たい。

あいまいな表現が相手を壊す。「たぶん」「しばらく」なんて言われたら、そりゃ待つでしょ。ハジメくんの素直さが表れている。そして、これはたぶん世間一般でも同じ。

かつて好きだった人のことって、僕は絶対忘れられないな。初恋も、もちろん。今どうしているか気になるし、もし今の僕の生活に登場してきたら、おそらく少なからずハジメくんのような感情を抱くやろな。

こんな生活が送れたら、まぁ幸せやろな。まさに絵に描いたような生活。うらやましい限りで、ぜひとも理想として描きたい。

「わかると思う。」このセリフこそが村上ワールドを表していると思う。

 

 

好み: ★★★★★☆

草枕  夏目漱石 著

 

草枕 (1950年) (新潮文庫)

草枕 (1950年) (新潮文庫)

 

 

あらすじ

”智に働けば角がたつ、情に棹させば流される――春の山路を登りつめた青年画家は、やがてとある温泉場で才気あふれる女、那美と出会う。俗塵を離れた山奥の桃源郷を舞台に、絢爛豊富な語彙と多彩な文章を駆使して絵画的感覚美の世界を描き、自然主義や西欧文学の現実主義への批判を込めて、その対極に位置する東洋趣味を高唱。『吾輩は猫である』『坊ちゃん』とならぶ初期の代表作。”

 

The First Line

”山路を登りながら、こう考えた。”

 

夏目漱石著、「草枕」を読みました。

 

 

難解すぎた。でもわかるこの小説の良さ。余の哲学を読み解くにはまだまだ僕は未熟すぎたけれど、景色の美しさと人の温もりを表すこの文章はとても魅力的だった。

俗世を離れるという現実からの逃避は、何も現代にだけ起こることではなくて、この時代にもあったんですね。明治から大正、戦争、民主主義など、激動期であったこの時代も、住みにくい世であったと思うと、現代が特別ということでもないな。

夏目漱石さんのファンと言うのもおこがましいけれど、やっぱり好きだな。人間のありのままに触れられる気がする。ついつい、この時代いいなと思ってしまう。夏目漱石さんの小説において、女性の存在は一つの特徴であると僕は思う。

”智に働けば角がたつ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。”

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

そして二人だけになった  森博嗣 著

 

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

 

 

あらすじ

”全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、建築家など6名が集まった。プログラムの異常により、海水に囲まれて完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は……。反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。”

 

The First Line

”僕は海が嫌いだ。”

 

森博嗣著、「そして二人だけになった」を読みました。

 

 

題名から惹かれた。ミステリーの傑作「そして誰もいなくなった」の要素を持ちつつ、森さんの理系要素もあって、さらには思いもよらない結末にたどり着いた。これはすごい。

ラスト100ページからが本番ってところかな。ミステリー要素のバルブでの出来事も読みごたえあったけれど、あくまで結末に向けての下ごしらえでしかなくて、早々にクライマックスがおとずれたときはついついあれ?と思ってしまった。最後の第10章で小説全体がひっくり返る。その衝撃たるや。

A海峡大橋ってあれやんな。そう思うと、何ともまぁスケールの大きいことやら。

2人の視点から書かれていて、それぞれ違った心理がまた緊張感を漂わせる。しっかり読んでいると、なぜ?と思う点はたしかにあった。でも、、、

理系独特な理論がいくつか紹介されていたけれど、どこか興味をもってしまう自分がいた。奥が深い。

 

 

好み: ★★★★★☆

神去なあなあ日常  三浦しをん 著

 

神去なあなあ日常 (徳間文庫)

神去なあなあ日常 (徳間文庫)

 

 

あらすじ

”平野勇気、18歳。高校を出たらフリーターで食っていこうと思っていた。でも、なぜだか三重県林業の現場に放りこまれてしまい――。携帯も通じない山奥!ダニやヒルの襲来!勇気は無事、一人前になれるのか……?四季のうつくしい神去村で、勇気と個性的な村人たちが繰り広げる騒動記!林業エンタテインメント小説の傑作。”

 

The First Line

"神去村の住人には、わりとおっとりしたひとが多い。”

 

三浦しをん著、「神去なあなあ日常」を読みました。

 

 

林業に着目した小説を読むのが初めてで、新鮮やった。

出てくる登場人物が皆とても個性的で、コミカルな小説で読みやすかった。ヨキの自由ぶりが田舎っぽさを感じて、奥さんのみきさんとの仲にうらやましく思った。そして、清一さんの奥さんに対する思いにも感動。勇気の恋は…。

林業って斜陽で普段はあんまり注目していないけれど、日本の国土の70%は山で、なくてはならない職業。その大変さとすばらしさも垣間見れてよかった。木ってなんもせんと生えているわけではないねんな。

村独特なコミュニティに少し憧れる。神様の存在を大切にして、自然と人間の住み分けをしっかりとしていて、そんな昔ながらの田舎な場所に癒される。

なにも一流企業に就職したり、大学に進学したりすることだけがすべてではない。どこに行っても楽しいことはあって、案外未知の思いもしない場所にこそ自分の居場所があったりして。

 

 

好み: ★★★☆☆☆

エンド・ゲーム  恩田陸 著

 

エンド・ゲーム―常野物語 (集英社文庫)

エンド・ゲーム―常野物語 (集英社文庫)

 

 

あらすじ

”『あれ』と呼んでいる謎の存在と闘い続けてきた拝島時子。『裏返さ』なければ、『裏返され』てしまう。『遠目』『つむじ足』など特殊な能力をもつ常野一族の中でも最強といわれた父は、遠い昔に失踪した。そして今、母が倒れた。ひとり残された時子は、絶縁していた一族と接触する。親切な言葉をかける老婦人は味方なのか?『洗濯屋』と呼ばれる男の正体は?緊迫感溢れる常野物語シリーズ第3弾!”

 

The First Line

”夜のバスは空いていた。”

 

恩田陸著、「エンド・ゲーム」を読みました。

 

 

正直な感想、よくわからなかった。常野シリーズ読んできたけれど、これはけっこう難しい。蒲公英草紙は面白かったけれども。

難解でよくわからないながらも、読んでしまう魅かれる雰囲気は、さすが恩田陸さんと思う。この物語は、映像向きやと感じた。実際映像で観たい箇所が少なからずあった。

表も裏も一緒という考え方、深い。表裏一体とは少し違ったニュアンスで、溶け込むような考え方。

現実の世界でも、常野一族のような特殊な人間っているんかな。いてほしい。少年的願望。

母と娘が同時期に結婚するって、どんな心情なるんやろ。あり得ることやけれど、すごいことやな。身の回りには合ってほしくない。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

対岸の彼女  角田光代 著

 

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

 

 

あらすじ

”専業主婦の小夜子は、ベンチャー企業の女社長、葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めるが……。結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、それだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く傑作長編。”

 

The First Line

”私って、いったいいつまで私のまんまなんだろう。”

 

角田光代著、「対岸の彼女」を読みました。

 

 

現代の人間関係をリアルに描いた小説。人間の残酷さを身に染みて感じた。

この小説では女性に焦点を当てていたけれど、これは男性でもそんな大差ないなと思った。まぁ男性の方が少しはあっさりしているんかな。

何かを起こそうとする人は嫌いやないけれど、いい加減で段取り悪い人は嫌い。葵みたいな人。

自分と異質なものを仲間はずれにする。仲間はずれにされたくないから周りに合わす。これが人間のコミュニティであり、もはやこれはどうしようもない本能的感覚なんやと僕は考えている。

愚痴を言うことは別に絶対悪いというわけではないけれど、醜い。愚痴ばっかりいう人ほど、自分を見ていない。

僕も元々はそうで仲間はずれを恐れていた時期もあったけれど、大学という社会に属した瞬間、こわいものがなくなった。つるむことが馬鹿馬鹿しくて、表面的な人間に飽き飽きした。今もそう思っている。だから、大学では全くもって孤立しているし、友だちなんて言うまでもなくいない。でも、それでいい。

本当の友だちって、そんな多いものやない。すぐ友だちって言葉出す人のことは信用できないし、まず僕は閉ざす。僕の考え方が正しいとは一概には言えないけれど、ただ、この淡白さは楽ですよ。これぐらいがちょうどいい。

僕は将来、どんなことがあっても奥さんの味方になり続けようと改めて決意した。

 

 

好み: ★★★☆☆☆

死神の精度  伊坂幸太郎 著

 

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

 

 

あらすじ

”①CDショップに入りびたり②苗字が町や市の名前であり③受け答えが微妙にずれていて④素手で他人に触ろうとしない――そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目には死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。”

 

The First Line

”ずいぶん前に床屋の主人が、髪の毛に興味なんてないよ、と私に言ったことがある。”

 

伊坂幸太郎著、「死神の精度」を読みました。

 

 

死神の視点からみた人間。淡白に人間を評価する半面、ミュージックに心を馳せる無邪気な一面がいとおしい。

6つそれぞれに違う物語があって、1つの小説でいろいろなジャンルを読んだ気になれた。いろんな感情になれる。最後に今までのことがつながって、すごくいい終わり方。清々しい気分になれたし、人生っていいなと思った。

それぞれに気づかぬうちに死が近づいていて、でも日常に千葉が加わっただけで特に変化はなくて、死に対する緊迫感はまるでない。死ぬ時がわかっていればやり残したことをやり遂げて死ぬことができるけれど、彼らには残念ながらできない。でも、それでも彼らは必死に生きていて、僕から見れば死ぬのがもったいないなと思うほど立派な人生に思えた。

もし僕が死神の存在に気づけたなら、好きな人に想いを告げるかな。

死神よ、僕の前にはまだ現れないでください。CDショップに入り浸る人には要注意。

 

 

好み: ★★★★☆☆

深夜特急  沢木耕太郎 著

 

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

 

 

深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール (新潮文庫)

深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール (新潮文庫)

 

 

深夜特急〈3〉インド・ネパール (新潮文庫)

深夜特急〈3〉インド・ネパール (新潮文庫)

 

 

深夜特急〈4〉シルクロード (新潮文庫)

深夜特急〈4〉シルクロード (新潮文庫)

 

 

深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)

深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)

 

 

深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン (新潮文庫)

深夜特急〈6〉南ヨーロッパ・ロンドン (新潮文庫)

 

 

あらすじ

〈1〉”インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗り合いバスで行く――。ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは、「大小」というサイコロ博奕に魅せられ、あわや……。一年以上にわたるユーラシア放浪が、今始まった。いざ、遠路二万キロ彼方のロンドンへ!”
〈2〉”香港・マカオに別れを告げ、バンコクへと飛んだものの、どこをどう歩いても、バンコクの街も人々も、なぜか自分の中に響いてこない。〈私〉は香港で感じた熱気の再現を期待しながら、鉄道でマレー半島を南下し、一路シンガポールへと向かった。途中、ペナンで娼婦の館に滞在し、女たちの屈託ない陽気さに巻き込まれたり、シンガポールの街をぶらつくうちに、〈私〉はやっと気づいた。”
〈3〉”風に吹かれ、水に流され、偶然に身をゆだねる旅。そうやって〈私〉はやっとインドに辿り着いた。カルカッタでは路上で突然物乞いに足首をつかまれ、ブッダガヤでは最下層の子供たちとの共同生活を体験した。ベナレスでは街中で日々演じられる生と死のドラマを眺め続けた。そんな日々を過ごすうちに、〈私〉は自分の中の何かから、一つ、また一つと自由になっていった――。”
〈4〉”パキスタンの長距離バスは、凄まじかった。道の真ん中を猛スピードで突っ走ったり、対向車と肝試しのチキン・レースを展開する。そんなクレイジー・エクスプレスで、〈私〉はシルクロードを一路西へと向かった。カブールではヒッピー宿の客引きをしたり、テヘランではなつかしい人との再会を果たしたり。前へ前へと進むことに、〈私〉は快感のようなものを覚えはじめていた――。”
〈5〉”アンカラで〈私〉は一人のトルコ人女性を訪ね、東京から預かってきたものを渡すことができた。イスタンブールの街角では熊をけしかけられ、ギリシャの田舎町では路上ですれ違った男にパーティに誘われて――。ふと気がつくと、あまたの出会いと別れを繰り返した旅もいつのまにか〔壮年期〕にさしかかり、〈私〉は、旅をいつ、どのように終えればよいのか、考えるようになっていた――。”
〈6〉”イタリアからスペインへ回った〈私〉は、ポルトガルの果ての岬・ザグレスで、ようやく「旅の終わり」の汐どきを掴まえた。そしてパリで数週間を過ごしたあと、ロンドンに向かい、日本への電報を打ちに中央郵便局へと出かけたが—―。Being on the road――ひとつの旅の終りは、新しい旅の始まりなのかもしれない。旅を愛するすべての人々に贈る、旅のバイブル全6巻、ここに完結!”

 

The First Line

”ある朝、眼を覚ました時、これはもうぐずぐずしてはいられない、と思ってしまったのだ。”

 

沢木耕太郎著、「深夜特急」を読みました。

 

 

中学の頃お世話になった塾の先生に大学入学を報告しに行った4年前、この本を紹介された。紹介というより読むべきと推された。その時はミステリーばかり読んでいたからいずれ読もう程度に気を留めていたけれど、もっと早くに読んでおくべきやった。この小説は、間違いなく大学卒業までに読むべきもので、早ければ早いほど良い。

僕はこの本を読んでいる途中、KLからマラッカ経由でシンガポールをバスで旅した。一人旅が決まってから偶然この小説をみつけたから、本当に偶然。これも運命なんかな。

国語学部に所属する身であるから、留学を経験したり、海外に行ったりする経験はそこそこにあった。この本をそれらの経験前に読んでおけば、もっと密の濃いこってりした経験が得られたと思うと少し後悔する。でも、遅かれこの小説と出会えてよかったし、これからの参考になる。

この小説を追って思ったのは、元々憧れていたヨーロッパよりもアジア圏の方に魅力を感じてる自分がいるということ。アジアをもっと放浪したいという刺激になった。

流れに身を任せる、これができる時間って本当に幸せなことなんやなと感じた。スケジュールなんてくそくらえ。そんな感覚も大切。そして、人生何とかなる。

 

 

好み: ★★★★★☆

ターン  北村薫 著

 

ターン (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)

 

 

あらすじ

”真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみながら目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。が、この世界には真希一人のほか誰もいなかった。そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると一日前の座椅子に戻ってしまう。◀▶ターン。いつかは帰れるの?それともこのまま……だが、150日を過ぎた午後、突然、電話が鳴った。”

 

The First Line

”君は、スケッチブックを開いて、八角時計をいくつも描いていた。”

 

北村薫著、「ターン」を読みました。

 

 

SFの要素に恋愛も含まれていて、今話題の「君の名は。」を思わせる小説。映画観てないから何とも言えんけれど。

人称が少し独特で、これが単純な一視点でないところが面白い。視点によって心情も移り変っていて、それこそがこの小説の核でありキーポイントやと僕は思った。

構成がすごく単純な起承転結やなと感じていたけれど、正直、結の結でもう少しはっきりしてほしかったかな。少し駆け足感あって、つながっていない感があって、そこが物足りなかった。

起きたら誰もいなくなって、しかも生活がターンされたら、自分ならどうなるやろ。ゴールが見えていたら楽しそうやけれど、永遠を感じさせられると絶望しかない。今日の次に明日があるからこそ毎日生き甲斐があるし、楽しい。

こんな状況になったら、電話だけで恋に落ちるやろうな。でも、それも真実か否か。

 

 

好み: ★★★☆☆☆

母性  湊かなえ 著

 

母性 (新潮文庫)

母性 (新潮文庫)

 

 

あらすじ

”女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語。”

 

The First Line

”10月20日午前6時ごろ、Y県Y市**町の県営住宅の中庭で、市内の県立高校に通う女子生徒(17)が倒れているのを、母親が見つけ、警察に通報した。”

 

湊かなえ著、「母性」を読みました。

 

 

意図されていたのか、見事にはまった。まさかの結末。「母性について」の場面が最後に効いてくる。

湊かなえさんの小説は、読んだ後にいつもどろどろとした余韻に襲われる。それが作風で、その現実味のあるミステリー感が魅かれる。

母と娘の関係の複雑さ。「母」と「娘」という役はあるものの、一人の人間であることを忘れてはいけなくて、子どもはけっして親の作品ではない。こうなってほしいという思いはあっても、それを強要し解釈し、自分本位になってしまうから歪む。

「母性」は元々みんなに備わっているものではなくて、育てていくうえで備わるものでもある。僕自身親ではないからなんとも言えない感覚ではあるけれど、ここにエゴは存在してもいいのか。いい気もするし、悪い気もする。

愛することって複雑で難しいですね。僕は愛を受けていると思うけれど、反面言い切れない自分もいる。

姑があんなにいびるのは、嫉妬からなんかな。理由はなんであれ、是非とも寛容になってほしい。あんなん、奴隷と大差ない。

 

 

好み: ★★★★☆☆