プラネタリウムのふたご いしいしんじ 著
あらすじ
”だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。――星の見えない村のプラネタリウムで拾われ、彗星にちなんで名付けられたふたご。ひとりは手品師に、ひとりは星の語り部になった。おのおのの運命に従い彼らが果たした役割とは?こころの救済と絶望を巧まず描いた長編小説。”
The First Line
”秋ふかいプラネタリウムの薄闇に、耳を破るような赤ん坊の泣き声がひびきわたったのは、午後四時の投影がはじまってから、十二分ほど過ぎたころだった。”
童話を読んでいるかのような優しい物語。心なしか、文章もひらがなが多く使われているような気がして、それも内容と合っていて、全体の優しい雰囲気を作っていた。
この小説には個人名が一切でていなくて、すべてが呼び名となっているところも、どこか現実から離れたおとぎ話を思わせる。
タットルの栓ぬきに発した最後の言葉、少し感動的ですごく深いなと思った。こんな表現できるものかと考えさせられたし、これは心にとめておいて損はない。「僕はね、水になるんだ。」
正直、流して読んだ部分もあるけれど、ゆっくりと優しさに触れたい人にはおすすめ。
手品は、すごいけれど腹が立つ。だまされるの分かっていてだまされるから。
好み: ★★☆☆☆☆