金閣寺 三島由紀夫 著
あらすじ
”1950年7月1日、「国宝・金閣寺焼失。放火犯人は寺の青年僧」という衝撃のニュースが世人の耳目を驚かせた。この事件の蔭に潜められた若い学僧の悩み――ハンディを背負った宿命の子の、生への消しがたい呪いと、それゆえに金閣の美の魔力に魂を奪われ、ついには幻想と心中するにいたった悲劇……。31歳の鬼才三島が全青春の決算として告白体の名文に綴った不朽の金字塔。”
The First Line
”幼時から父は、私によく、金閣のことを語つた。”
難解な小説で、古文を読むような感覚にすら陥ることも時々あったけれど、筋は割と単純で、また現代にも通ずるものがあるのかなと思った。文体がその当時の言い回しが使われていて、新鮮であったとともに、改めて近代文学嫌いやないなと再確認できた。
学僧の金閣寺に対する感情。美という集合体に、女や憎、闇、癒、敵さえも含まれていて、この複雑かつ絶対的な象徴こそが、この小説において味わうことができる醍醐味やと僕は思う。そしてこの感情は、行き過ぎてはいるけれど現代に生きる我々にも秘めているもので、なりの果てを示すとともに、変わらない人間性も見出せる。
これが100%のフィクションではないというところもまた面白い。現実味がないけれど、実際起こっている出来事。この、何とも言えないバランスがとても独特で、さらに告白体であることがより心的に響く。不朽の名作と呼ばれるのも納得。
この小説を国語の授業に取り上げられていたら、僕は間違いなく寝る。でも、今となっては、先生の解釈を聞いてみたいと思える。
理解できない点はいくつかあるから、いつの日かもう一度読み返してみたい。
好み: ★★★★★☆