女のいない男たち 村上春樹 著
あらすじ
〈これらを書いている間、僕はビートルズ「サージェント・ペパーズ」やビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」のことを緩く念頭に置いていた。 〉と、著者が「まえがき」で記すように、これは緊密に組み立てられ、それぞれの作品同士が響きあう短編小説集である。絡み合い、響き合う6編の物語。村上春樹、9年ぶりの短編小説世界。
The First Line
〈ドライブ・マイ・カー〉”これまで女性が運転する車に何度も乗ったが、家福の目からすれば、彼女たちの運転ぶりはおおむね二種類に分けられた。”
〈イエスタデイ〉”僕の知ってる限り、ビートルズの『イエスタデイ』に日本語の(それも関西弁の)歌詞をつけた人間は、木樽という男一人しかいない。”
〈独立器官〉”内的な屈折や屈託があまりに乏しいせいで、そのぶん驚くほど技巧的な人生を歩まずにはいられない種類の人々がいる。”
〈シェエラザード〉”羽原と一度性交するたびに、彼女はひとつ興味深い、不思議な話を聞かせてくれた。”
〈木野〉”その男はいつも同じ席に座った。”
〈女のいない男たち〉”夜中の一時過ぎに電話がかかってきて、僕を起こす。”
村上春樹著『女のいない男たち』を読みました。
久々に村上春樹さんの小説読んだ。
村上春樹さんの作品は、決して起承転結がはっきりとしているわけではなくて、日常を切り取った物語やから、ミステリのようなインパクトのある結末にはならないけれど、それが良い。その日常の一コマに、愛や友情などの人間性が詰め込まれていて、それを楽しむ高度な物語ばかり。
今回もそんな感じで、むしろ今まで以上に物語ひとつひとつは写真のようにありのままが写されていた。「女のいない男たち」と言う題名は、まさにその通り。
個人的には、『イエスタデイ』がお気に入り。好きやのに、友だちすぎて性にこだわらない姿勢。めっちゃ共感できる。付き合う=性交という安易な考え方に違和感を覚えている僕にとったら、この木樽の姿は自分を見ているよう。とても切なくなった。
不倫が世間を賑わしている今日この頃。その核にあるストーリーを見ていければ、視聴者としても楽しめる。
めったにない村上春樹さんの「まえがき」にも注目。
好み: ★★★★☆☆