プシュケの涙 柴村仁 著
あらすじ
”夏休み、補習中の教室の窓の外を女子生徒が落下していった。自殺として少女の死がひそかに葬られようとしていたとき、目撃者の男子たちに真相を問い詰めたのは少女と同じ美術部の男子・由良だった。絵を描きかけのまま彼女が死ぬはずがない。平凡な高校生たちの日常が非日常に変わる瞬間を描く青春ミステリ。”
The First Line
”暑さ厳しい七月終わりのことだった。”
柴村仁著『プシュケの涙』を読みました。
久しぶりにヒット作に出会えた感覚。すごく面白い小説やった。
高校の夏問い詰めたのはいう眩しすぎる舞台に、暗すぎる自殺。その一件を取り巻いて、高校生独特の複雑な心境がシンクロしていて、これでもかというぐらいに陰を生んでいる。そのコントラストが鮮やかすぎて、きれい。
この小説は、前半に自殺の一件が描かれていて、後半はその少女のお話。最後まで読んだとき、胸が苦しくなる。それぐらいに暗さと明るさの対比が絶妙。
男子生徒たちの葛藤、少女の心の闇、そして由良の純粋さ。それらを夏の雰囲気に包んで、これでもかというぐらいに輝かす。眩しすぎる。
高校生って、こんな複雑やったんや。自分の高校生活はもっと単純やったと思う。終始楽しかったし。でも、たぶん今より心は複雑で、闇もあって、人間関係に悩まされて、それは小説も現実も同じなんかな。それを言語化しているかどうかの違い。
高校生に戻りたい。
好み: ★★★★★★