小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

恋愛寫眞 もう一つの物語  市川拓司 著

あらすじ

”カメラマン志望の大学生・瀬川誠人は、嘘つきでとても謎めいた女の子・里中静流と知り合う。誠人はかなりの奥手だったが、静流とは自然にうちとける。そして静流は誠人に写真を習うようになる。やがて誠人は静流に思いを告げられるが、誠人にはずっと好きな人がいて、その思いを受け取ることはできなかった。一年後、卒業を待たずに静流は姿を消した。嘘つきでしょっちゅう誠人をからかっていた静流だったが、最後の大きな嘘を誠人についたまま……。恋することの最も美しくて切ないかたちを描いた、市川拓司のもうひとつのベストセラー!”

 

The First Line

”彼女は嘘つきだった。”

 

市川拓司著、『恋愛寫眞 もう一つの物語』を読みました。

 

 

この小説は、テーマを決めてから書かれたんやろな。だからこそ、最も美しくて切ないかたちを描てたんやと思う。

結末はとても意外で、そして心に染みる。

大学生になると恋愛も手の届きやすくて当たり前のものとすら思われる中で、こんなにも恋愛が大切な感情でまた重いものであることに気づかせてくれる、そんな内容。この小説を読んでもなおすぐに次の恋愛に切り替えることができるような人を僕は理解できないと思う。

市川拓司さんの小説はこれで2作目やけれど、あえてファンタジー要素を取り入れることで大切なメッセージを込めてくれる。これは、普通の有り得る恋愛小説では絶対に表現できないこと。さすがと思った。

こんなにも真っ直ぐな恋愛感情を持つことができたら、おそらくそれだけで幸せ。不器用ながらも一途に想いを表現できる静流がうらやましい。

 

 

好み: ★★★★☆☆

 

恋愛寫眞―もうひとつの物語 (小学館文庫)

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