夏のバスプール 畑野智美 著
あらすじ
”夏休み直前の登校中、高校一年生の涼太は女の子にトマトを投げつけられる。その女の子・久野ちゃんが気になるが、仙台からきた彼女には複雑な事情があるらしい上、涼太と因縁のある野球部の西澤と付き合っているという噂。一方、元カノは湿っぽい視線を向けてくるし、親友カップルはぎくしゃくしているし、世界は今年で終わるみたいだし――。どうする、どうなる、涼太の夏!?胸キュン青春小説!”
The First Line
”真っ赤に熟したトマトが飛んできて、僕の右肩に直撃する。”
畑野智美著、『夏のバスプール』を読みました。
これほどまでに眩しくて、爽やかな青春小説はなかなかない。最後まで、どうなるんやろうと気になってしかたなくなる。読み終わっても、まだこの世界に浸っていたいと思っている。
映画化されてよく女子高生が観に行くような恋愛青春小説とは全然違って文学的。でも、眩しいぐらいの青春小説。夏の日差しが文章からはっきりと見えてきて、その風景と相まって直視できないほどのきらびやかさ。今までに読んだ夏設定の青春小説で一番日差しが染みた。
その光の下で渦巻く高校生の複雑な心境。純粋ながらも現実を知りつつある彼らの葛藤や苦しみがとても繊細に表現されていて、対比が絶妙。そして、教師たちの温かさ。有村先生みたいな先生、絶対好かれる。
とても短期間で涼太の身の回りにいろんなことが起こって、それが涼太のどこか抜けたでも照れくさくも純粋に向き合う姿がとても愛おしい。そして、天真爛漫で強さを装いつつも悩む久野ちゃん。威張りながらも一途な西澤君。などなどキャラクター全員が輝いている。
こんな高校生活送りたかったなと思うけれど、たぶん実際は僕もこんなキラキラした高校生活を送っていたんやと思う。だからこんな小説を読みたいと思うんやし、つまりはあの頃に戻りたい。
涼太みたいに何気なく他人を傷つけてもしかしたら根に持たれているかもしれない。でも、涼太のような純粋さは持ちたいな。にしても、失恋はつらい。
好み: ★★★★★★