小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

黄昏の百合の骨  恩田陸 著

あらすじ

”強烈な百合の匂いに包まれた洋館で祖母が転落死した。奇妙な遺言に導かれてやってきた高校生の理瀬を迎えたのは、優雅に暮らす美貌の叔母二人。因縁に満ちた屋敷で何があったのか。「魔女の家」と呼ばれる由来を探るうち、周囲で毒殺や失踪など不吉な事件が起こる。将来への焦りを感じながら理瀬は――。”

 

The First Line

"あの人の姿を思い浮かべる時、いつもその時刻は夕暮れ時だ。”

 

恩田陸著、『黄昏の百合の骨』を読みました。

 

 

恩田陸さんの小説独特の雰囲気に満ちた、ミステリアスな物語。

百合に包まれた洋館の謎と親戚関係の因縁。恩田陸さんらしい設定と登場人物。たまに読者を置いていくほどの独走ミステリーもあるけれど、この小説は最後までしっかりと完結できた。次々と謎が出てきては怪しい行動に惹かれて、気づけばどんどんページを繰っていた。

この小説に光は決して似合わない。黄昏、良い表現。タイトルが絶妙だなと読後に感じた。さすがとしか言いようがない。

大人びている女子高生理瀬にも注目。この小説にぴったりな謎めいた主人公。聡明ながらも謎を秘めた従兄弟。優雅でどうしようもない妹伯母と優しさを表に見せる姉伯母。全てが「魔女の家」にぴったり。勝雪の最初の慣れ慣れしさに少し嫌悪感を抱いたけれど、めっちゃいいやつ。こんな光の存在が一人いることで、小説の深みがでる。

家族の因縁って怖い。由緒正しい家にはつきものなんかな。でも、そんな曰くつきの屋敷が家の近くにあったら少し面白そう。

 

 

好み: ★★★★☆☆

 

黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

黄昏の百合の骨 (講談社文庫)