小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

ぼくのメジャースプーン  辻村深月 著

 

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

 

 

あらすじ

”ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。”

 

The First Line

”薄く伸びた秋の日差しが、歩くぼくの影をうっすら地面に映し出す。”

 

辻村深月著、『ぼくのメジャースプーン』を読みました。

 

 

罪と罰の在り方、そして愛の在り方を考えさせられる小説。

やられたからやり返す、所謂「復讐」。でも、被害者が復讐をした時点で加害者になりうる。そして、復讐を果たした時、完全にすっきりするかといえばそうでもない。「ぼく」が、子どもながらに加害者に対してどう復讐し、向き合うのかというのがこの小説のベースであり、先生との掛け合いの中に、読者自身が内容を超えて現実的に考えさせられる。とても深い。

”「『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する。その気持ちを、人はそれでも愛と呼ぶんです」”愛は相手への思いやりと言われるのが一般的なのかもしれないけれど、それでもそれは「エゴ」から生まれた感情であって、その当たり前やけれど忘れていたことを思いださせてくれた。「エゴ」をもって相手に思いやることで、その好意が当たり前ではなくて本心からのものになるのかな。

ふみちゃんはすごく大人。こんな大人が世の大半をしめれば、もっと住みやすい世の中になるんやろな。汚い部分も包んでしまうほどのピュア。

相手を縛る呪いの言葉、それって人それぞれ違ったものをもっているんかも。だから、発言には気をつけましょう。

 

 

好み: ★★★★☆☆