小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

Yの悲劇  エラリー・クイーン 著

 

Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

 

 

あらすじ

”行方不明を伝えられた富豪ヨーク・ハッタ―の死体が、ニューヨークの湾口に掲がった。死因は毒物死で、その後、病毒遺伝の一族のあいだに、目をおおう惨劇が繰り返される。名探偵ドルリー・レーンの推理では、有り得ない人物が犯人なのだが……。ロス名義で発表した四部作の中でも、周到な伏線と、明晰な解明の論理は読者を魅了し、海外ベストテンで常に上位を占める古典的名作。”

 

The First Line

”その二月の午後、ブルドッグのようにぶかっこうな深海トロール船ラヴィニアD号は、はるばる大西洋の波濤をこえてかえってきたが、サンディ岬を回って、ハンコック要塞を眼前にすると、船首に水泡をけたてひとすじに白い船跡をひきながら、ニューヨーク湾下へ入ってきた。”

 

エラリー・クイーン著、「Yの悲劇」を読みました。

 

 

悲劇シリーズの2作目。古典的名作と呼ばれる所以に少しながら触れられた。

きちがいじみた一族に次々と襲う惨劇。ミステリを読みすぎたせいか、正直一つ一つにパンチはあまりなくて、あれ?とは思ったけれども、それがすべてつながり、事件の全貌が見えた時、さすがだなと思った。気づいてもいいのに気づけない伏線、そしてこの事件の終わり方もまた名作所以なのかも。

このシリーズは、他の古典的名探偵シリーズとは少し異なって軽快なやり取りがしばしば見受けられるから、テンポよく読める。サム警部がまた良い味出しとる。

ドルリー・レーンは他の探偵とはまた少し違って、しっかりといた論理的プロセスを踏んで解決するタイプ。シャーロックホームズのようなずば抜けた観察力と推理力のタイプではないから、どちらかというと地味な印象やけれども、でもやっぱり名探偵。レーンの懐の深さが今作では際立つ。

ポワロの事件、ホームズの事件、それぞれの要素が少しずつ感じられた。名作のつながり。

 

 

好み: ★★★★☆☆