きいろいゾウ 西加奈子 著
あらすじ
”夫の名は武辜歩、妻の名は妻利愛子。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若夫婦が、田舎にやってきたところから物語は始まる。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった――。”
The First Line
”とおいとおい、空のむこう、雲をこえて、かぜをすりぬけて、そのもっともっとむこうに、一頭のゾウがすんでいました。”
ずっと気になっていた作家さんの小説。
文章が伝える感情や情景にとても力があるなと感じた。明るい場面、暗い場面と人物の心情がこれほどまでに手に取るようにわかる文章ってなかなかない。だから、入り込める。西加奈子さんの文章、きれいやからとても好き。
優しい小説。読みやすいとかではなくて、人の優しさに触れられる。お互いを想いやる気持ちや、周りを支え支えられることに気づける関係、そしていろんな種類の恋。当たり前やけれどなかなか実際に触れることが難しい、そんなシンプルかつ遠い感情の大切さに気付かされる。
周囲の生き物と会話できるって、これほど楽しいことないかもと少し憧れる。でも、寂しいからなんでしょう。
この小説の核と思われる「寂しさ」。でも、この悩みって見方を変えるととても幸せな悩みであって、相手がいるからこそ感じられる贅沢な感情やなと思った。つまりは、幸せやろうと不幸やろうと、それぞれに悩みは少なからずあるもので、違う立場からしたらそれが憧れにもなりうるし、悩みってそんなもん。やし、いくらしんどくても自分が幸せと思っている方がよっぽど楽しいかなと、最近読んだ小説も踏まえてそう感じました。
こんな田舎暮らしいいな。憧れる。
好み: ★★★★★☆