きつねのはなし 森見登美彦 著
あらすじ
”「知り合いから妙なケモノをもらってね」籠の中で何かが身じろぎする気配がした。古道具店の主から風呂敷包みを託された青年が訪れた、奇妙な屋敷。彼はそこで魔に魅入られたのか(表題作)。通夜の後、男たちの酒宴が始まった。やがて先代より預かったという”家宝”を持った女が現れて(「水神」)。闇に蟠るもの、おまえの名は?底知れぬ謎を秘めた古都を舞台に描く、漆黒の作品集。”
The First Line
”天城さんは鷺森神社の近くに住んでいた。”「きつねのはなし」
”先輩の下宿に通い、その言葉に耳を傾けていた頃のことを思いだす。”「果実の中の籠」
”夕立が近づいてくる気配を私は好んだ。”「魔」
”通夜や葬儀へ出かけたことはあまりない。”「水神」
森見登美彦著、「きつねのはなし」を読みました。
いつものコミカルで深海学生が主役のファンタジーとは打って変わった、不気味な小説。けれども軽快な文章は健在で、だからか読みやすい。森見登美彦さんらしくない雰囲気やけれども森見登美彦さんらしい内容。
4つとも、ホラーまではいかないけれどもどれも不気味で、古都が舞台となっている分余計に謎が秘められる。あくまでファンタジーではあるけれども、実際京都の路地歩いていたら遭遇しそうな、そんなリアリティも感じられる。
個人的には、2つ目の話が面白かった。少し感動的で、森見登美彦さんの小説恒例の先輩も登場して、切ない。こんな、何をしているのかわからない、主のような、未知に満ちた、でも人間的な先輩に出会いたかった。
3つ目の話の、夏の雰囲気や幼馴染みの関係、そして酒を飲む場面が、とても絵になっていて憧れすら感じた。
あの”ケモノ”は結局何ものやったのか。一度出会ってみたいものです。京都歩いていたらいつかは見つかるかな。
好み: ★★★☆☆☆