小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

白ゆき姫殺人事件  湊かなえ 著

 

白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)

白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)

 

 

あらすじ

”化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。人人への聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方。匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。傑作長編ミステリー。”

 

The First Line

”もしもし、起きてた?”

 

湊かなえ著、「白ゆき姫殺人事件」を読みました。

 

 

この小説は、内容がどうこうよりも、社会に対するメッセージととらえる方がいいかも。殺人事件にだけ焦点を当てて読んでしまうと、どこか物足りないけれど、それが示すものをしっかりととらえることでこの小説の価値が見出せると思う。

噂話の独り歩き。そしてマジョリティの意見を信じる集団心理。たとえその人との過去の思い出があろうと、うわさ話一つで真実が捻じ曲げられかねない。これは、なにもメディアを用いた社会心理だけではなくて、もっと小さなコミュニティでも十分起こりうるし、とても他人事には思えないし、思うべきではない。

匿名の問題性も指摘。それぞれ意見を持つことは悪いことではない。ただ、そこに悪意をもって誰かを攻撃するんは倫理的ではない。ここの欠落が近年では顕著で個人的にはとても恐怖。なぜ否定的な意見ばかりが流れるのか。なぜ肯定しないのか。これが、集団心理であり、心の安定、そして、娯楽。

こんな世の中にいまさらモラルを諭したところで、改善されるとは思えない。僕は、人を見極め、自分を守り、そんな卑劣な人間は突き放す。

この問題の根底には、血の通わないメディアの存在が一番大きいと思います。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆