小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

悪の教典  貴志祐介 著

 

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

 

 

悪の教典〈下〉 (文春文庫)

悪の教典〈下〉 (文春文庫)

 

 

あらすじ

〈上〉”晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき――。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。”
〈下〉”圧倒的人気を誇る教師、ハスミンこと蓮実聖司は問題解決のために裏で巧妙な細工と犯罪を重ねていた。三人の生徒が蓮実の真の貌に気づくが時すでに遅く、学園祭の準備に集まったクラスを襲う、血塗られた恐怖の一夜。蓮実による狂気の殺戮が始まった!ミステリー界の話題を攫った超弩級エンターテインメント。”

 

The First Line

”混沌とした夢の中にいた。”

 

貴志祐介著、「悪の教典」を読みました。

 

 

まさに一気読み。ホラー系を特別好んでるわけではないけれど、この系統の小説はついついページを繰ってしまう。それだけの緊張感。この物語に関しては、その雰囲気が群を抜いていて、上下巻ともすぐに読み終えた。

蓮実先生の頭の切れ具合が尋常やない。今まで読んだ小説のどのサイコよりも怖い。サイコの人は、リスクをおって欲を満たすがためにそれだけ計算ずくさなあかんのやけれど、この先生は異常。

上巻は終始問題が起きてそれを処理する繰り返しやけれど、それはそれで面白いし、何よりそれが下巻に全面的に活きてくる。信者と不信が絶妙なバランス。

この物語には、蓮実先生だけにとどまらず、次々と人間のエゴが垣間見えて、その付属的なところまで怖い。あくまで小説の中の世界やけれど、たぶん現実にもこれぐらいのエゴは皆隠し持っているんやろな。僕自身も一概に否定できないし。そう思うと、学校という空間は何が起きてもおかしくないのかも。

僕は、この蓮実先生のような先生嫌いやないけれど、不信感を抱く派かな。性悪説に基づくから。サイコパスに対して、性善説で見てしまうと悪行が見えなくなる。それを顕著に表した物語だと思う。

孟子性善説荀子性悪説。ほんとよくできた考え方。

 

 

好み: ★★★★★★