小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

冷たい校舎の時は止まる  辻村深月 著

 

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

 

 

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

 

 

あらすじ

〈上〉”雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヶ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう。”
〈下〉”学園祭のあの日、死んでしまった同級生の名前を教えてください――。「俺たちはそんなに薄情だっただろうか?」なぜ、「ホスト」は私たちを閉じ込めたのか。担任教師・榊はどこへ行ったのか。白い雪が降り積もる校舎にチャイムが鳴ったその時、止まったはずの時計が動き出した。薄れていった記憶、その理由とは。”

 

The First Line

”落ちる、という声が本当にしていたかどうか。”

 

辻村深月著、「冷たい校舎の時は止まる」を読みました。

 

 

なかなかなボリュームで、読み応えがあった。最初の方は、読めど読めど物語の結末がまったくよめなくて、読者までもを不安かつ不可思議に巻き込んでいく。まさに霧がかった状態。けれども、徐々に明らかにされる過去の事実とそれぞれのストーリーにはどれも読み入って、結末には驚きながらも読後は余韻に浸れた。

ホラー?と思いつつも、高校生独特の人間関係がベースとなっていて、決して起伏の激しい物語ではなかったのに次が気になって読むスピードがどんどん加速していった。この舞台はとても魅力的。登場人物一人ひとりの感情がダイレクトに伝わるし、そして彼らの人間らしさをなにより感じた。

個人的には「HERO」に特に感動した。隠しながらも優しさに満ち溢れているし、ちゃんと人間と向き合う姿に心打たれた。ツンデレって、まず間違いなく優しいし良い人。

高校生に限らず人それぞれ悩みや喜びは違うくて、それを共有しようとしまいと勝手やけれど、それを遠くからでもそっと見守ってくれる存在って大切。

教室という閉鎖的な空間。いじめの問題が取り上げられる度にこの閉鎖的コミュニティが問題視されるけれど、一概には否定してほしくはないな。この小説は、その良さと悪さの両方に触れられているけれど、かけがえのない友達と思い出って、この与えられた中での人間関係だからこそできるんかなと思う。もちろん人それぞれやけれど、僕は教室が好き派。大学生を経験して改めて感じている。

友だちと呼べる存在は、僕は大学に入ってからは見つかっていない。今いる友達には常に感謝しているし、一生失いたくないと思っています。

 

 

好み: ★★★★★☆