小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

クリムゾンの迷宮  貴志祐介 著

 

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

 

 

あらすじ

”藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ?傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。”

 

The First Line

”焚き火の中で爆ぜる小枝……。”

 

貴志祐介著、「クリムゾンの迷宮」を読みました。

 

 

ホラーっぽい要素も残しつつもホラーっぽくない小説。進んでも進んでも徐々にしか変わらない展開が、また釘付けにさせる。前半はとにかく平坦。でも終始緊張がはりつめている。

前回貴志祐介さんの小説を読んだ時にも感じたけれど、結末をあえてはっきりさせないところで余韻を感じさせる。これは上手い終わり方やと思う。

変わらない中に潜む恐怖こそが、他のどの恐怖よりも怖いんやと思う。恐怖に直面して怖がるんは当たり前やねんけれど、じらされているようなほんとに恐怖があるかすらわからない状況って、想像ばかりが先走りして恐怖を増幅させる。この小説にもその要素がある。

これは映像化すると面白さが半減すると思う。小説だからこその刺激、恐怖。

昨日寝る前、部屋で蜘蛛を見かけたような気がして、あれが果たして本当に蜘蛛であったのか、もしかしたらベッドに登ってきてるんやないやろかという想像からの不確定な恐怖に見舞われた。少しこの小説の恐怖と似てると思いませんか?

 

 

好み: ★★★★☆☆