小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

蒲公英草紙  恩田陸 著

 

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

 

 

あらすじ

”青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れられるちから、未来を予知するちから……、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。”

 

The First Line

”いつの世も、新しいものは船の漕ぎだす海原に似ているように思います。”

 

恩田陸著、「蒲公英草紙」を読みました。

 

 

久々の常野物語。人間本来の姿を見ているようでけっこうお気に入り。

近代文学にふれたような感覚で、読んでよかったと思える。今では常識のカタカナ用語をひらがなで表記してあるところがまた一興。昔の雰囲気が伝わってくる。

この時代には今では当たり前のものもなくて、世界も狭い分確かな事実が少ないけど、その分人間らしさは豊かで、大人でさえも無垢で生き生きしてる。知らないことを追いかけようとする姿、人を大切にする姿、そして自然と生きている姿、すごく輝いていてとてもうらやましい。

現代では第3次産業言うて人のためのサービスにうるさい世の中やけど、しょうみお金の事しか考えてない。昔の方がよっぽど人を大事にしてた。

僕も人間豊かな昔に生まれたかったな。前世で生きていたんやろうけど。僕には、物に埋もれて本質を見失った世の中より、想像と感性で生きる昔の方が合ってる。これは近代文学を読むたびに感じる。

時代に飲み込まれた先には何がある。

 

 

好み: ★★★★★☆