小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

スリープ  乾くるみ 著

 

スリープ (ハルキ文庫)

スリープ (ハルキ文庫)

 

 

あらすじ

”テレビ番組の人気レポーター・羽鳥亜里沙は、中学卒業を間近にした二月、冷凍睡眠装置の研究をする〈未来科学研究所〉を取材するために、つくば市に向かうことになった。撮影の休憩中に、ふと悪戯心から立ち入り禁止の地下五階に迷い込んだ亜里沙は、見てはいけないものを見てしまうのだが……。どんでん返しの魔術師が放つ傑作ミステリー。”

 

The First Line

”羽鳥亜里沙という少女のことを、どれだけの人が憶えているだろう。”

 

乾くるみ著、「スリープ」を読みました。

 

 

また見事に裏をかかれた。テンポよく話が進んで、気づけば第九章で一気にはまる。ナレーション的な視点で書かれていたのも面白かった。

この物語は、単に小説として楽しむだけではなくて、著者からの直接的なメッセージをしっかりと受け取ることで初めて読了とみなすべきだと思う。現代科学に対する警鐘。僕もこのことについては前から少し考えていたからメッセージにより共感したし、利便性を追求してこのまま科学発展し続けたら、近い将来人間の在り方を根底から覆すことになりかねないと僕は思う。人間死ぬときは死ぬ、それを受け入れるべき。輪廻を今一度改めて考えてみるのもいいかも。

この物語で描かれる30年後の世界、面白そう。でもこのユートピアはどこか気味悪くて、妙にリアルだから期待反面怖さもある。特に憧れたのは、「瞬乾」。

胡蝶の夢」、この言葉好きだな。結局のところ、今この瞬間の自分も夢なんかも。

 

 

好み :★★★★★☆