小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

ジェノサイド 高野和明 著

あらすじ

〈上〉イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方はーー人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント、堂々の文庫化! 

 

〈下〉研人に託された研究には、想像を絶する遠大な狙いが秘められていた。一方、戦地からの脱出に転じたイエーガーを待ち受けていたのは、人間という生き物が作り出した、この世の地獄だった。人類の命運を賭けた二人の戦いは、度重なる絶体絶命危機を乗り越えて、いよいよクライマックスへーー日本推理作家協会賞山田風太郎賞、そして各種ランキング首位に輝いた、現代エンタテインメント小説の最高峰。

 

The First Line

移り住んだ豪邸での生活は、何年経っても慣れるということがなかった。

 

高野和明著『ジェノサイド』を読みました。

 

 

大冒険がようやく完結した。

上下巻にわたって時間かけて読んできたけれど、まったく飽きずに最後まで楽しめた。これほどまでに壮大な物語に出会ったことない。

この小説は、正直現代ではあり得ないSFという前提があるから、どんな局面になっても興ざめすることなくて、むしろその展開を欲してる自分がいた。でも、そう遠くない未来にこんな出来事が起こるかもって思った。もしかしたら、もう起こってるのかも。

これって、宇宙人がいたら、、、と状況的には似てて、その考え方がもろ反映されている。敵とするか味方とするか。ピアースのような人がいてくれたら、幸せな解決に至れるかな。

アフリカで起こっていることって日本にまでは届いてなくて、日本人ももっと知るべきやと思うし、そして人類という単位で一つになるべき時であるのかも。

戦争、ダメ、ゼッタイ。

 

 

好み: ★★★★★☆

 

ジェノサイド 上 (角川文庫)

ジェノサイド 上 (角川文庫)

 
ジェノサイド 下 (角川文庫)

ジェノサイド 下 (角川文庫)

 

 

 

思い出のとき修理します 4 谷瑞恵 著

あらすじ

不仲に思えた両親の絆、亡き妻への秘めた思い……時計店には今日も人々の「思い出」が持ち込まれる。そんな中、秀司が作ってくれているドレスウォッチの完成が近いと聞き、喜びとともに複雑な気持ちになる明里。秀司の元に、スイスの時計工房から手紙が届いているらしいからだ。ともに商店街で暮らす未来を夢見つつ、本当は秀司がスイスで修行を続けたいのではないかと悩み……。ついに完結!

 

The First Line

少女は社務所の軒下に座り込んでいた。

 

谷瑞恵著『思い出のとき修理します4』を読みました。

 

 

大好きなシリーズ完結編。このシリーズに初めて出会った時はその優しい余韻にしばらく浸っていて、街で時計店を見かける度に物語を思い出して、今回読んだ時その時の感情がよみがえってきた。いい余韻に包まれている。まだ読み続けたいと思える小説。

ただ、なぜか谷瑞恵さんの小説読んでると、情景描写がしにくい。

時計ってただ時を知らせるものではあるけれど、たとえ同じ時計でも持ち主それぞれの時は違っていて、時計一つ一つに物語があることにとても気付かされると同時に、自分自身の時計への想いもこのシリーズに出会ってから変わった。

明里と秀司みたいなカップルすごく憧れるし、この寂れた商店街の温かさもすごく憧れる。こんなとこ住めたら、心地よいやろな。

思い出の時を刻む時計を大切にしよう。ともに時を刻む相手を大切にしよう。

 

 

好み: ★★★★★☆

 

 

 

夜宵 柴村仁 著

あらすじ

日が暮れてから湖の小島にひっそりと立つ細蟹の市。国宝級のお宝、非合法なもの、生き死にの区別なく人間さえ売られ、お面をつけた異形の者が跋扈する。その異世界に迷い込んだ記憶喪失の少年カンナは市守りのサザに助けられる。自分は果たして何者なのか。甘美な悪夢に読者を誘うファンタジック・ホラー。

 

The First Line

提灯の赤が黒々とした水面に揺れている。

 

柴村仁著『夜宵』を読みました。

 

 

久々にファンタジー小説を読んだ。前に読んだ『プシュケの涙』で柴村仁さんの小説に興味を持って読んでみた。

正直ファンタジーは映像で観たいなー派の立場やけど、やっぱりやった。ただ、小説でも十分楽しかったし、だからこそ映像でどうなるか気になる。異世界で少し不気味で、でもその中に日常と共通する感情があって、遠いようで近い物語やった。

ゴーストタウンのイメージが、台湾の九份と少し重なってそれで進めてたからか、好きな雰囲気やった。行ってみたいなと少し思った。

柴村仁さんの小説は感情の中に闇を含めながらもストレートで、とても繊細なんかな。もっと読みたい。

 

 

好み: ★★★☆☆☆

 

 

夜宵 (講談社文庫)

夜宵 (講談社文庫)

 

仮面病棟 知念実希人 著

あらすじ

療養型病院に強盗犯が籠城し、自らが撃った女の治療を要求した。事件に巻き込まれた外科医・速水秀悟は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知るーー。閉ざされた病院でくり広げられる究極の心理戦。そして迎える衝撃の結末とは。現役医師が描く、一気読み必至の〈本格ミステリー×医療サスペンス〉。著者初の文庫書き下ろし!

 

The First Line

秒針が時を刻む音が、六畳ほどの空間にやけに大きく響く。

 

知念実希人著『仮面病棟』を読みました。

 

 

『屋上のテロリスト』で知念さんの小説に興味を持って、本屋の店頭に並んでるのを前々から気になってたこともあり手に取ってみた。

一言で言えば、既視感。この小説、前も読んだことあったっけと思うほどけっこうありきたりな内容で、期待は上回らなかった。

籠城と化した病院の秘密が徐々に暴かれ、ピエロの意図も見えてきて、そしてクライマックス。なんとなく、結末は見えてた。小説読み過ぎの弊害かな。確かに緊迫感あってページ繰るペースは遅くなかったけれど、一方で拭いきれない既視感。まぁ、面白くないことはない。この類の内容で大きくはずれることはない。

心理戦を期待というか、秘密は何かと追う方に注目すればいいかなと。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

 

 

仮面病棟 (実業之日本社文庫)
 

 

 

六の宮の姫君 北村薫 著

あらすじ

”最終学年を迎えた《私》は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げてく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。《あれは玉突きだね。……いや、というよりはキャッチボールだ》ーー王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、《私》の探偵が始まった……。”

 

The First Line 

水色の空に、太陽がまぶしい。

 

北村薫著『六の宮の姫君』を読みました。

 

 

この小説は、芥川龍之介を始めその時代の文学が好きな人が読んだらめっちゃ面白いと思う。この小説そのものが、「六の宮の姫君」卒論になってるみたい。

内容が文学に特化してるから、純粋にミステリを求めている人には物足りないというか、難しすぎてわからないと思う。僕もその1人。出てくる人物の名前が辛うじてわかる程度で、読むん難しすぎた。

《私》シリーズは、日常のささいな「なぜ?」に焦点を当てて推理していくとてもライトなミステリながら、小説自体はライトではなくてしっかりと文学的で読み応えがあるから面白い。

大学時代を含めて、もっと自分の世界を持っておいたらもっと楽しかったんやろな。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

 

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

 

 

 

銀行仕置人 池井戸潤 著

あらすじ

通称"座敷牢"。関東シティ銀行・人事部付、黒部一石の現在の職場だ。五百億円もの巨額融資が焦げ付き、黒部はその責任を一身に負わされた格好で、エリートコースから外された。やがて黒部は、自分を罠に嵌めた一派の存在と、その陰謀に気付く。嘆いていても始まらない。身内の不正を暴くことーーそれしか復権への道はない。メガバンクの巨悪にひとり立ち向かう、孤独な復讐劇が始まった!

 

The First Line

「五百億円、融資していだだきたい」

 

 池井戸潤著『銀行仕置人』を読みました。

 

 

現代版時代劇と勝手に思っている池井戸潤さんの物語。今回も悪者が成敗されてスカッとした。

今回の舞台もメガバンクで、主人公の黒部が半沢直樹と重なった。でも、半沢直樹ほどのキレものではなくて、どちらかというと泥臭い現実的なタイプ。

一章につき一つづつ成敗されていくから、連作のつもりでも読めるから読みやすい。でも、それらが最後の結末にしっかりと結びつく。

最後の倍返しは今回もあるけれど、正直少し淡白で物足りなかった。もっとがっつりコテンパンにして欲しかった。なんか、外部の力ありみたいで少し残念。

池井戸潤さんの物語は、結末がわかっててもスカッとできるから楽しめる。けっこうネタバレ的なこと書いてるかもやけど、まぁ大丈夫かな。

池井戸潤さんの物語は日常のモチベーションになる。かっこいいサラリーマンになる。

 

 

好み: ★★★★☆☆

 

銀行仕置人 (双葉文庫)

銀行仕置人 (双葉文庫)

 

 

 

屋上のテロリスト 知念実希人 著

あらすじ

一九四五年八月十五日、ポツダム宣言を受諾しなかった日本はその後、東西に分断された。そして七十数年後の今。「バイトする気ない?」学校の屋上で出会った不思議な少女・沙希の誘いに応え契約を結んだ彰人は、少女の仕組んだ壮大なテロ計画に巻き込まれていく!世界をひっくり返す、超傑作エンターテインメント!

 

The First Line 

列島が静止した。

 

 

知念さんの小説前から気になってて今回読んでみたけれど、ページ繰る手が止まらなかった。旅行中の飛行機の中でほとんど読み終えてた。

日本が分裂する物語といったら、個人的に好きな、山田悠介著『ニホンブンレツ』が思い浮かぶけれど、この本もそれに劣らない内容。高校生が主人公やけれど決して青春とか恋愛とかがテーマではなくて、ほんまにエンターテインメント。ストーリーを楽しんでほしい。

テロの計画がとても緻密で、どんどん騙されていく。正直、途中からなんとなく結末を読めてきてたことは隠さないが、それでも楽しめた。

こういう、「もし日本が、、、」っていう設定好きなんかも。僕やったら、「西」に居たいな。

 

 

好み:★★★★★☆

 

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

 

 

 

ピンクとグレー 加藤シゲアキ 著

あらすじ

大阪から横浜へ越してきた小学生の大貴は、マンションで同い年の真吾と出会う。性格は全く違う2人だったが惹かれあい、親友に。やがて高校生になった2人は、雑誌の読者モデルをきっかけに芸能活動をスタート。同居も始めるが、真吾だけがスターダムを駆け上がっていくことで2人の仲は決裂してしまうが……。ステージという世界の魔法、幻想に魅入られた幼なじみの2人の青年の愛と孤独を鮮やかに描いた、切ない青春小説。

 

The First Line 

番組が始まる。

 

加藤シゲアキ著『ピンクとグレー』を読みました。

 

 

最初読み始めたときは、スタンド・バイ・ミーを真似たありきたりな青春小説かなと思って淡白に読んでたけれど、読み進めていくにつれてどんどん感情が押し寄せて、終いにはThe文学と言える余韻に読後浸ってた。

芸能界という自分には全く縁のない世界が舞台やからどこまでついていけるかなと少し心配ではあったけれど、とてもわかりやすくてまた等身大で、心に響くものが確かにあった。

芸能界って確かに煌びやかで華々しくて、憧れの対象とはなるけれど、その陰はとても深くて、色んなものを犠牲にするんやなと思うと、テレビ見る視点が少し変わりそう。それほど、影響受けた。芸能界にいる著者だからこそ書ける小説。

この友情は本物。こんな結末だからこそ表現できてるのかな。申し分なしの良作。

 

 

好み: ★★★★★☆

 

ピンクとグレー (角川文庫)

ピンクとグレー (角川文庫)

 

 

 

家族八景 筒井康隆 著

あらすじ

”幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬ーー彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。”

 

The First Line 

”前庭の、赤い花が満開だった。”

 

筒井康隆著『家族八景』を読みました。

 

 

まるで昼ドラを見ているような、ドロドロとした夫婦感の関係を読んだ感覚になる小説。

8つの家族を見る七瀬の物語で、その幼さと目の前の大人なドロドロさが対照的で、大人の猥雑さが際立っていた。8種8用ではあるけれど、根底に根付くものは同じで、これは単なる物語上のことで片付かずに実際の現実の夫婦間にもあることなのかも。恐ろしい。

まだ結婚して家庭を持っていない身でこの小説を読んだから恐ろしいって感情が出たのかもしれんけれど、結婚して家庭を持ってからこの小説を読んだら、あるある話になるんかな。

『七瀬ふたたび』から七瀬シリーズに入って、その時にも感じたけれど、七瀬ってミステリアスな一面を持つ一方でとても単純で、行動が幼い。やることがどんどん裏目に出て、雰囲気がイマイチ掴みきれない。アホなん?って時々思ってしまうほど。

テレパスを持つ人は大変なのでしょう。もし自分の周りに持っている人がいたら、どーしよ。心の中読まれたくない。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

 

家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)

 



植物図鑑 有川浩 著

あらすじ

お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。噛みません。躾のできたよい子ですーー。思わず拾ってしまったイケメンは、家事万能のスーパー家政夫のうえ、重度の植物オタクだった。樹という名前しか知らされぬまま、週末ごとにご近所て「狩り」する風変わりな同居生活が始まった。とびきり美味しい(ちょっぴりほろ苦)”道草”恋愛小説。

 

The First Line

上司のお供で外回りだったその日は、アスファルトに濃い影の落ちる真夏日だった。

 

有川浩著『植物図鑑』を読みました。

 

 

少し前に映画化されたかで注目されていて、でもその時はミーハーになるからと今ごろ読む。

いかにも高校生が食いつきそうな、ほろ苦くも幸せな気分になれるちょっぴり大人な恋愛小説。だからか、少し物足りなさも。

道端に生えている雑草が季節と思い出を呼び込む、そんな視点あれば日々の風景がますます幸せになれそう。明日から、歩いてると少しは雑草に目を向けられるかな。

家の前で行き倒れてる人いて、助けるなんてそんな展開はまぁフィクションやからいいとして、樹みたいな好青年はなかなかおらん。だからこそ理想化してみんなに読まれたんかな。

野菜嫌いやからレシピの料理作る気はせんけど、料理そのものの意欲は少し高まった。料理男子、あり。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

 

植物図鑑 (幻冬舎文庫)

植物図鑑 (幻冬舎文庫)