小説の浮かぶ空

日々読んでいく小説の感想を自由気ままに綴っていきます。

陽気なギャングが地球を回す  伊坂幸太郎 著

あらすじ

”嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス!”

 

The First Line

”二人組の銀行強盗はあまり好ましくない。”

 

伊坂幸太郎著、『陽気なギャングが地球を回す』を読みました。

 

 

ハードボイルドとは対極にある、どこか腑抜けた正統派のギャング小説。

ここまでに自分たちをギャングと開き直って強盗できたら、警察も捕まえようにも認めてしまいかねない、それぐらいの潔さ。もちろん銀行強盗はいけないことやけれど。

死体が出てきたのに、こんなにも脇役になるサスペンス小説はなかなかない。普通、事件解決に力が入るところやけれど、この小説ではあくまで一イベントに過ぎない。そして、また陽気なギャングたちは悪者やのにヒーローに見えてしまう。この小説の世界は無法社会なのかな。何でもありに見える。

小説内に出てくるあらゆるものが、最後につながってきて、とてもすっきりとする。伏線ほどではないけれど、すべて回収されるのは気持ちがいい。伊坂幸太郎さんの小説はだから読みたくなる。

銀行強盗は4人が好ましいですね。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

 

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

 

 

殺人鬼フジコの衝動  真梨幸子 著

あらすじ

一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?精緻に織り上げられた謎のタペストリ。最後の一行を読んだ時、あんたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する……!”

 

The First Line

”この小説は、ある女の一生を描いたものである。”

 

真梨幸子著、『殺人鬼フジコの衝動』を読みました。

 

 

最後の一行を読むことで、小説への感想が一変する。一気読みしてしまいます。

この小説全体の方向は、殺人鬼フジコの一生を描いたドキュメンタリー要素の内容。でも最後の一行でそれは一気に物語としてのサスペンスに変わる。叙述トリックではないけれど、ここまで一変させるこの小説の力はすごい。

フジコの心情がとても繊細に書かれていて、それが殺人に結びつくとき、鳥肌が立つ。フジコにとっての母の存在と、その後生まれる娘の存在。怖いぐらいに同じ道をたどっていて、その不気味さたるや、ホラーの域に達している。最後まで一貫して不気味な緊迫感は張りつめていて、物語そのものは平坦やけれど終始高い場所が保たれている感じ。全部が見せ場。

「あたしは蝋人形、おがくず人形」これがとても怖い。最後にまで尾を引いている。

こんなじんせいだったら、間違いなく自分やったら自殺している。こんなの耐えられない。その、不幸さは少し可哀そうに思う一方で、不気味な要素がどうしても勝る。

 

 

好み: ★★★★★★

 

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

 

 

黄色い目の魚  佐藤多佳子 著

あらすじ

”海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて――。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく、青春小説の傑作。”

 

The First Line

”テッセイに会うことになった。”

 

佐藤多佳子著、『黄色い目の魚』を読みました。

 

 

キュンとくるよりかは、純文学に近い青春小説。

2人の視点で物語が進んでいっているから、余計な感情が入ってこず真っ直ぐな二人の想いに触れられる。佐藤多佳子さんの小説を初めて今回読んだけれど、これが特徴なんかな。

絵をきっかけに縮まる二人の距離。二人とも不器用ですれ違いながらも、手探りで相手に近づこうとする姿がとても高校生らしい。そして同時進行で起こる部活の葛藤。高校生はほんと忙しい。

何かにマジになれることの大切さに気づかされる。マジになる勇気と不安は誰しもにあることで、これから避けずに向き合うことができるのも高校生の特権。大人になったら不安が増して失敗を恐れるあまりにマジから避けてしまう。

16歳というこんなにも繊細な季節を自分も過ごしてきたのかと思うと、改めて大変だったなと思うと同時に、うらやましく思う。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

 

黄色い目の魚 (新潮文庫)

黄色い目の魚 (新潮文庫)

 

 

地下鉄に乗って  浅田次郎 著

あらすじ

”永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは三十年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出会う。だが封印された”過去”に行ったため……。思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。吉田英治文学新人賞に輝く名作。”

 

The First Line

”町に地下鉄がやって来た日のことを、真次は克明に覚えている。”

 

浅田次郎著、『地下鉄に乗って』を読みました。

 

 

今の40代ぐらいの人が読んだらきっと涙がこぼれ落ちるであろう内容の小説。

ワンマンな父に振り回され、反面教師としつつもそれに似ていることに気づく息子。そして父の過去を知り、その今までに見たことのない一面を知った息子。父という存在の偉大さに気づく年齢になって初めて理解できるのかな。

正直、話がまとまっていなくて僕にはよくわからなかった。地下鉄に一貫してほしいのになぜか夢が出てくるし、父と息子に焦点を当ててほしいのに途中から禁断の愛が入ってくるし。いろんな要素があってそれはそれで良いのかもしれないけれど、僕はあまり好まない。

戦中戦後の時代は大変だったと思うけれど、なぜかそのころへの憧れがある。闇市行ってみたい。実際買い物はしたくないけれど。そんな、不自由でごちゃごちゃしていた昭和の雰囲気にとても興味がある。

東京行って地下鉄乗って、階段上がったら別世界に行けたなんて物語、起こらないかな。

 

 

好み:★☆☆☆☆☆

 

地下鉄に乗って (講談社文庫)

地下鉄に乗って (講談社文庫)

 

 

恋愛寫眞 もう一つの物語  市川拓司 著

あらすじ

”カメラマン志望の大学生・瀬川誠人は、嘘つきでとても謎めいた女の子・里中静流と知り合う。誠人はかなりの奥手だったが、静流とは自然にうちとける。そして静流は誠人に写真を習うようになる。やがて誠人は静流に思いを告げられるが、誠人にはずっと好きな人がいて、その思いを受け取ることはできなかった。一年後、卒業を待たずに静流は姿を消した。嘘つきでしょっちゅう誠人をからかっていた静流だったが、最後の大きな嘘を誠人についたまま……。恋することの最も美しくて切ないかたちを描いた、市川拓司のもうひとつのベストセラー!”

 

The First Line

”彼女は嘘つきだった。”

 

市川拓司著、『恋愛寫眞 もう一つの物語』を読みました。

 

 

この小説は、テーマを決めてから書かれたんやろな。だからこそ、最も美しくて切ないかたちを描てたんやと思う。

結末はとても意外で、そして心に染みる。

大学生になると恋愛も手の届きやすくて当たり前のものとすら思われる中で、こんなにも恋愛が大切な感情でまた重いものであることに気づかせてくれる、そんな内容。この小説を読んでもなおすぐに次の恋愛に切り替えることができるような人を僕は理解できないと思う。

市川拓司さんの小説はこれで2作目やけれど、あえてファンタジー要素を取り入れることで大切なメッセージを込めてくれる。これは、普通の有り得る恋愛小説では絶対に表現できないこと。さすがと思った。

こんなにも真っ直ぐな恋愛感情を持つことができたら、おそらくそれだけで幸せ。不器用ながらも一途に想いを表現できる静流がうらやましい。

 

 

好み: ★★★★☆☆

 

恋愛寫眞―もうひとつの物語 (小学館文庫)

恋愛寫眞―もうひとつの物語 (小学館文庫)

 

 

ルーズヴェルト・ゲーム  池井戸潤 著

あらすじ

”大手ライバル企業に攻勢をかけられ、業績不振にあえぐ青島製作所。リストラが始まり、歴史ある野球部の存続を疑問視する声が上がる。かつての名門チームも、今やエース不在で崩壊寸前。廃部にすればコストは浮くが—―それぞれの人生とプライドをかけて挑む奇跡の大逆転とは。”

 

The First Line

”赤茶けた土のついたスパイクで打席を均したとき、北大路犬彦は興奮も緊張も感じなかった。”

 

池井戸潤著、『ルーズヴェルト・ゲーム』を読みました。

 

 

この小説は、「半沢直樹」よりかは「下町ロケット」派の内容。正義による悪者退治よりかは、熱き社会人のサクセスストーリー。

胸を熱くさせる内容ってたいてい若者が主人公のものが多いけれど、この小説には社会人ばっかり出てくる。一つの会社で働く社員一人ひとりの思いが一つになったり衝突したり。こんな会社、楽しいだろうな。いろんな視点で物語が進んでいくから、いろんな思いを感じる。

池井戸潤さんの小説全体に言えることやけれど、ここまで悪者を表現しそして逆境を感じさせるのはすごい。読んでてまるで当事者になったかのように感情が入ってくる。そして、最後はものすごくすっきりする。

社会人になったらただ働いて、それがまるで歯車のように思ってしまうこともあるけれど、それでもやっぱり一人ひとりの人生がしっかりとあるんだなと気づかされる。青春こそすばらしいというわけでもなさそう。社会人にも良いところはあるから、それが自信にもなる。

就職前にこの小説に出会えてよかった。とても熱い感情を得ることができた。

 

 

好み: ★★★★★☆

 

ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)

ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)

 

 

夏のバスプール  畑野智美 著

あらすじ

”夏休み直前の登校中、高校一年生の涼太は女の子にトマトを投げつけられる。その女の子・久野ちゃんが気になるが、仙台からきた彼女には複雑な事情があるらしい上、涼太と因縁のある野球部の西澤と付き合っているという噂。一方、元カノは湿っぽい視線を向けてくるし、親友カップルはぎくしゃくしているし、世界は今年で終わるみたいだし――。どうする、どうなる、涼太の夏!?胸キュン青春小説!”

 

The First Line

”真っ赤に熟したトマトが飛んできて、僕の右肩に直撃する。”

 

畑野智美著、『夏のバスプール』を読みました。

 

 

これほどまでに眩しくて、爽やかな青春小説はなかなかない。最後まで、どうなるんやろうと気になってしかたなくなる。読み終わっても、まだこの世界に浸っていたいと思っている。

映画化されてよく女子高生が観に行くような恋愛青春小説とは全然違って文学的。でも、眩しいぐらいの青春小説。夏の日差しが文章からはっきりと見えてきて、その風景と相まって直視できないほどのきらびやかさ。今までに読んだ夏設定の青春小説で一番日差しが染みた。

その光の下で渦巻く高校生の複雑な心境。純粋ながらも現実を知りつつある彼らの葛藤や苦しみがとても繊細に表現されていて、対比が絶妙。そして、教師たちの温かさ。有村先生みたいな先生、絶対好かれる。

とても短期間で涼太の身の回りにいろんなことが起こって、それが涼太のどこか抜けたでも照れくさくも純粋に向き合う姿がとても愛おしい。そして、天真爛漫で強さを装いつつも悩む久野ちゃん。威張りながらも一途な西澤君。などなどキャラクター全員が輝いている。

こんな高校生活送りたかったなと思うけれど、たぶん実際は僕もこんなキラキラした高校生活を送っていたんやと思う。だからこんな小説を読みたいと思うんやし、つまりはあの頃に戻りたい。

涼太みたいに何気なく他人を傷つけてもしかしたら根に持たれているかもしれない。でも、涼太のような純粋さは持ちたいな。にしても、失恋はつらい。

 

 

好み: ★★★★★★

 

夏のバスプール (集英社文庫)

夏のバスプール (集英社文庫)

 

 

黄昏の百合の骨  恩田陸 著

あらすじ

”強烈な百合の匂いに包まれた洋館で祖母が転落死した。奇妙な遺言に導かれてやってきた高校生の理瀬を迎えたのは、優雅に暮らす美貌の叔母二人。因縁に満ちた屋敷で何があったのか。「魔女の家」と呼ばれる由来を探るうち、周囲で毒殺や失踪など不吉な事件が起こる。将来への焦りを感じながら理瀬は――。”

 

The First Line

"あの人の姿を思い浮かべる時、いつもその時刻は夕暮れ時だ。”

 

恩田陸著、『黄昏の百合の骨』を読みました。

 

 

恩田陸さんの小説独特の雰囲気に満ちた、ミステリアスな物語。

百合に包まれた洋館の謎と親戚関係の因縁。恩田陸さんらしい設定と登場人物。たまに読者を置いていくほどの独走ミステリーもあるけれど、この小説は最後までしっかりと完結できた。次々と謎が出てきては怪しい行動に惹かれて、気づけばどんどんページを繰っていた。

この小説に光は決して似合わない。黄昏、良い表現。タイトルが絶妙だなと読後に感じた。さすがとしか言いようがない。

大人びている女子高生理瀬にも注目。この小説にぴったりな謎めいた主人公。聡明ながらも謎を秘めた従兄弟。優雅でどうしようもない妹伯母と優しさを表に見せる姉伯母。全てが「魔女の家」にぴったり。勝雪の最初の慣れ慣れしさに少し嫌悪感を抱いたけれど、めっちゃいいやつ。こんな光の存在が一人いることで、小説の深みがでる。

家族の因縁って怖い。由緒正しい家にはつきものなんかな。でも、そんな曰くつきの屋敷が家の近くにあったら少し面白そう。

 

 

好み: ★★★★☆☆

 

黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

 

 

プリズム  百田尚樹 著

あらすじ

”ある資産家の家に家庭教師として通う聡子。彼女の前に屋敷の離れに住む青年が現れる。ときに荒々しく怒鳴りつけ、ときに馴れ馴れしくキスを迫り、ときに紳士的に振る舞う態度に困惑しながらも、聡子は彼に惹かれていく。しかしある時、彼は衝撃の告白をする。「僕は、実際には存在しない男なんです」。感涙必至の、かつてない長編恋愛サスペンス。”

 

The First Line

”私が初めて岩本家を訪れたのは三月の初めだった。”

 

百田尚樹著、『プリズム』を読みました。

 

 

普通の恋愛小説とは一味違った設定。

百田さんの小説は、とにかく勉強されて書かれている感がすごい。これほどまでに難しいテーマでも事細やかに書かれていて、とてもリアリティを感じられる。読後は、授業を受け終えた時のように知識に溢れる。そして、さすが構成作家さんと思える構成。ぶれずしっかりとしているから読みやすい。

聡子さん個人的には好きになれん。相手の状況を顧みずに自分の恋を押し付ける感じがあって、これが大人の恋愛なんかもしれんけれどそのわがままさが子供っぽい。結末に向けて恋が盛り上がる様子は、昼ドラそのもの。そんな大人な恋愛小説が読みたい人にはぴったりかも。

多重人格が主題になるねんけれど、もし自分がと思うとやりきれない気持ちになる。別人格が現れる間の記憶がないなんてただただ怖い。でも、実際にあることやねんな。子どものころ、「24人のビリー・ミリガン」の特集番組を見て少しトラウマがあって、それにもこの小説が関連しているから最初少し読むの躊躇したぐらい。でも、最後まで読んで読んでよかったなと今は思ってる。

 

 

好み: ★★☆☆☆☆

 

プリズム (幻冬舎文庫)

プリズム (幻冬舎文庫)

 

 

御手洗潔の挨拶  島田荘司 著

 あらすじ

”嵐の夜、マンションの十一階から姿を消した男が、十三分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。男は殺されるために謎の移動をしたのか?奇想天外とみえるトリックを秘めた四つの事件に名探偵御手洗潔が挑む名作。”

 

The First Line

「数字錠」”私が御手洗潔との長いつき合いを思い起こす時、いつも頭に浮かぶのは彼の風変わりな性格のことである。”

「疾走する死者」”猿島で起こった不思議な事件のことは、いつかお話ししたと思う。”

紫電改研究保存会」”「何のまじないだい?そりゃ」”

ギリシャの犬」”神田川は、郊外から山の手を抜け、ほとんど東京の中心部を貫くようにして流れてくると、隅田川に注ぎ、終る。”

 

島田荘司著、『御手洗潔の挨拶』を読みました。

 

 

奇想天外なトリックとしか言いようのないトリックたち。こんなんもし長編のミステリで使われたら、おそらく許されない。でも、それが短編でかつ御手洗潔が絡むからこそ面白くて、許せる。だからこの小説はトリックよりも、御手洗潔の行動や物語そのものを単純に楽しむものかなと感じた。そこが、シャーロックホームズとは少し違う。

とは言いつつも、御手洗潔シリーズこそ現代日本版シャーロックホームズと言いたくなる要素が豊富にある。設定が大英帝国やなくて日本というところがまた手の届きそうで気楽な良いところ。

この少し飛んだ推理は、どこか古畑任三郎を思わせる。みんなを置いてきぼりにして勝手に推理が飛んで、でも筋が通って解決する様は面白い。

シャーロックホームズシリーズを読んだ人にはぜひこの4つの物語を読んでほしい。きっと、共通する点を見いだせるはず。そして、御手洗潔の人柄に触れてほしい。

 

 

好み: ★★★☆☆☆

 

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)